■島の人から生きる力や生活の知恵を学ぶ
11月6日(土)、第2回目が無事に終了いたしました。
今回は土曜日の昼間開催でしたが、たくさんの方々にご参加いただき、とても嬉しく思います。
ありがとうございました!
この週末島旅学校オンラインイベントは、実際に現地へ旅することが難しくなってしまった昨今、島・船・旅が好きな有志で開催しています。
「学校は島、先生は島の人」と題し、日本の島々がいかに魅力あふれた地域であるか知っていただくこと。
そして、島の方(先生)との交流を通して、島での生きる力や生活の知恵を学んでいただきます。
■新島で生きる4名の先生方
さて、第2回目は東京都の新島(にいじま)でした。
新島は東京から南へ約160Km、竹芝桟橋から高速船で2時間20分。
コーガ石を使った石造りの建物が特徴で、ミルキーブルーの海が輝く異国情緒溢れる島です。
このブログでは新島編の模様とともに、先生方が感じる「島で生きること」についてお伝えします。
今回、新島や島での活動について教えてくださった4名の先生方です。
▼時間割▼ ※は集合写真での位置
1. ナビゲーター希さんによる新島旅の模様
2. 梅田久美先生(※上段中央)による、新島&コーガ石の紹介
3. 新島の未来を担う若手3名の先生方による活動紹介
①宮川 隼人先生(Hostel NABLA管理人)※右上
②青沼 宏樹先生(NUMA FILMES 動画クリエイター)※右下
③櫻井 浩司先生(株式会社宮原)※左下
4. 新島の焼酎と名物くさやの試飲試食タイム
5. 島を学べるクイズ
6. 事前質問「島に移住するメリットとは?」への回答
7. 島で生きることとは?
8. 本日学んだことのまとめ
まずはナビゲーター希さんによる新島旅の模様より、コーガ石についてお伝えします。
1. 東京・新島の旅 コーガ石の島へ
島で見つけた石の建造物の数々。
湯の浜露天温泉のすぐ向こう側は太平洋です。夕陽や星空を眺めながら温泉に浸かることができるなんて最高ですね。
そしてこの建造物の数々に使われている石が、新島を象徴する「コーガ石」です。
コーガ石とは、太古の昔から幾度となく繰り返した火山の噴火でできた火成岩の一種。世界的に見ても珍しい石で、日本では新島だけだそう。
表面は粗い目をしている 片手でひょい!
コーガ石は片手でひょいと持ち上げられるほど軽くて、柔らかい。
そのため、「運んだり加工するのにも便利だったのではないか?」と希さん。
石が柔らかいなんて、どんな感触なんでしょう…?
触ってみたい!
新島ではコーガ石の集落を歩いたり、石をめぐる旅がとても楽しそうです。
石造りの建造物が好きな方にはたまらないのでは。
■「新島は石の島で、ガラスの島だ」
このコーガ石はほぼガラス質で、熱を加えると透き通ったオリーブグリーンのガラスに変身します。
とっても美しいですね!
美しすぎてため息がでる新島ガラス
新島ガラスアートセンターへ取材に訪れたときのこと。
ガラスアーティストの野田収さんが、「新島は石の島で、ガラスの島だ」と仰っていたそうです。
こうしたコーガ石があってこその新島ですが、今、島の方々は採掘していません。
ですが、建造物を保存して、後世に伝えるための活動をしている方々がいらっしゃいます。
そのひとりが、梅田久美先生です。
2. 久美先生による、新島&コーガ石の紹介
久美先生は新島出身、新島在住。
コーガ石造りの古い家を改修して、2017年4月ゲストハウス「Hostel NABLA」をオープンされました。
ゲストハウスをオープンしたきっかけは、村の中心地に長い間廃墟となっていたコーガ石造りの建物を見せてもらったとき、造りがゲストハウスにぴったりだなと思ったそう。
新島の紹介では、歴史、食文化、産物、コーガ石、観光スポットなど幅広く紹介してくださいました。
■新島と式根島が繋がっていた!?
まず驚いたのが、昔は新島と式根島が繋がっていただろうということ。
50年ほど前まで当然の事実として語り継がれていたそうです。
やっぱり繋がっていなかったとの記述も見つかったことがあるそうですが、どうやら砂地で繋がっていたらしい。
江戸時代、新島で作った塩を式根島へ運ぶため、その砂地を使っていたとか。
島と島が砂地で繋がっていたなんて、とても興味深い歴史ですね。
地質学者も式根島と繋がっていたのは事実だろうと仰っているそうです。
■新島の風土を生かした甘い玉ねぎ
食文化では、くさや、あめりか芋に加えて、”新島玉ねぎ”という甘い玉ねぎが名産品と教えてくださいました。
冬場に吹く強い西風のおかげで海水が降ってくるため、海水を撒かなくても自然に甘くなるのだそう。
島の名産品というのは、その土地の環境を受け入れた先人たちによる知恵が詰まっているものが多いと感じます。
■オリーブグリーンの正体は鉄分
「コーガ石を溶かすとほとんど混ぜ物をしなくてもガラスに変化し、含まれる少量の鉄分の具合でオリーブグリーンに変化する」と久美先生。
ガラスは熱に強いので、加工に適しているのですね。
ガラスアートセンターにて 野田由美子さんの作品
また、国内外から名だたるガラスアーティストが集まる「国際ガラスアートフェスティバル」が過去連続32回ほど開催されました。(現在はコロナ禍のためお休み中)
アーティストたちが新島で制作し、オークションも行われるのだとか。
美しきガラスアートの祭典。いつか見てみたいですね!
■ミルキーブルーの海が輝く海岸へ
観光スポットのお話では、海をメインに教わりました。
まずは東側の羽伏浦(はぶしうら)海岸。
サーファーの聖地としても有名です。
コーガ石の成分が海に溶け込んで、独特のミルキーブルーの海になるそう。
美しい!!これは行かないといけませんね。
また、こちらは羽伏浦海岸の南にある白ママ断崖(しろままだんがい)。
大波に侵食されてできた砂の断崖です。
高さは250メートル以上!
左下に映る人と比較すると雄大なのがよくわかります。
そして西側の前浜(まえはま)海岸。
羽伏浦海岸と違って静かです。
手前に写っている橋は「ボロ桟」と呼ばれていて、ボロボロの一番古い桟橋が観光スポットとしてとても有名なのだそう。
たしかに行ってみたくなる気持ち、とてもわかります。
久美先生が教えてくださった新島の素敵なところはまだまだたくさんありました。こちらで紹介したのは一部ですが、どのお写真もすごく素敵で、久美先生が新島を心から愛していらっしゃることがとても伝わりました。
…魅力がありすぎて選ぶの大変だっただろうなぁ。
ゆっくり島を訪れて、24時間うつろう景色に癒されたいですね。
■石が柔らかいってどういうコト!?
ここで久美先生に呼ばれて隼人先生が登場。
モニター越しに実際のコーガ石を見せてくださるかと思いきや、想定外のデモンストレーションが始まりました。
コーガ石の特徴の一つは「柔らかい」こと。
それを証明するために隼人先生が持ってきたのはなんとハサミ。(しかも100均)
躊躇することなく、サクサクとコーガ石を切っているではありませんか!(動画でご紹介できないのが残念)
切った断面も見せてくださいました。
目が粗いですね。
軽いので水中に沈めるとすぐに浮かんできます。
■魅惑のコーガ石あれこれ
そんな不思議なコーガ石は、新島でもともと建材として使われてきました。
久美先生によると、
・ガラス質だから火にとても強い(煙突の内側にも使われるほど!)
・発泡しているから保温性が高い
これからのことから、新島の建物の7割くらいは、コーガ石がどこかしら使われているそう。
さらに、おもしろいお話がもう一つ。
現在、新島でコーガ石の採掘は行われていないのですが、採掘場は今やなんと、サバイバルゲームに使われているとのこと。
よくみると人が見えます。
アフガニスタンのようで雰囲気がピッタリだと人気なのだとか!
ちなみにコーガ石は、同じく火山島であるイタリアのリパリ島でも採れると言われています。
しかし、成分は同じだが石の質としては別物なのではないか?と地質学者の先生は見立てているようです。
赤くて軽くてやわらかい魅惑のコーガ石…
新島で触ってみたいですね。
それでは次に、新島の未来を担う3名の先生方より、それぞれの活動をご紹介いただきましょう。
2. 新島の未来を担う若手3名の先生方による活動紹介
①宮川 隼人(みやがわ はやと)先生:Hostel NABLA管理人
隼人先生からは、コーガ石造りのNABLAの特徴をご紹介いただきました。
Hostel NABLAは内装にもコーガ石が使われています。
コーガ石は保温性が高いので、冬は暖房やストーブをつけるとすぐに暖まるそう。
ただ朝はひんやりしているそうですが、それは石がもつ自然のことなのかなと感じます。
庭にコーガ石のバーベキュー台が!お洒落すぎる…
お客様から好評でスタッフさんもお気に入りだとか。
■NABLAから広がるお客様同士の輪
NABLAに泊まるお客様は石造りが好きな人が多いため、内装のコーガ石から島の話に広がり、お客様同士が仲良くなることが多いと、とても嬉しそうに話してくださいました。
NABLAがきっかけでお客様同士で楽しんでいただけるのは嬉しいですね。
隼人先生ご自身もお客様との時間を楽しんでいらっしゃる様子がとても伝わりました。
NABLAに泊まって島の話をたくさん聞いてみたいです。
②青沼 宏樹(あおぬま ひろき)先生:動画クリエイター
■きっかけは趣味で始めた写真や動画
宏樹先生は新島生まれ。高校卒業後、教員、青年海外協力隊、学童指導員を経て、今年4月に新島へUターン。
趣味で始めた写真や動画を子どもたちや保護者にとても喜んでもらえたことがきっかけで、動画クリエイターに転身。
「作品で、子どもの笑顔と島で生きるヒトの魅力を世界中に伝えたい」と宏樹先生。
新島で生きる「ヒト」の魅力について、ご自身の作品を通して教えてくださいました。
それはもう、写真の子どもの笑顔に負けないくらい輝いた表情で!
きっと子どもたちも宏樹先生が大好きなのでしょうね。
宏樹先生と子どもたちの心のつながりを感じました。
宏樹先生の作品は、NUMA FILMSホームページやインスタグラムをぜひご覧ください。(このブログの下にリンク貼っておきます)
■離島で暮らす子どもたちのために
ファインダー越しに様々な新島をとらえ、高校卒業まであたりまえのように見てきた風景や人が、戻ってきてからものすごく魅力的であったと気づいたそう。(コーガ石もあたりまえすぎて当時は魅力に気づけなかったとか)
その魅力を写真や動画を通して表現していきつつ、今後は島で生きる葛藤をリアルに表現した短編映画も作りたいとのこと。
離島という特殊な環境で育つ子どもたちのために、映画を通して、これからどうやって道を切り拓いていくのかを考えるきっかけになればと仰っていたのが印象的でした。
短編映画、楽しみにしています。
③櫻井 浩司(さくらい こうじ)先生:株式会社宮原
浩司先生は2016年にUターンし、株式会社宮原にて焼酎造りと小売店業務に従事。
新島を代表する焼酎ブランド「嶋自慢(しまじまん)」と、お酒に欠かせないおつまみを教えてくださいました。
焼酎の紹介では、嶋自慢の6つのラインナップのうち、「羽伏浦」と「七福嶋自慢」を見せてくださいました。
■嶋自慢のおすすめは?
「羽伏浦」は羽伏浦海岸をイメージした青いボトルの麦焼酎。
ラムネみたいな香りで、ソーダ割がおすすめとのこと。
「七福嶋自慢」は新島名産品のアメリカ芋(七福芋とも呼ばれる)を使用した芋焼酎。
七福という名の通り、おめでたい席で振る舞われる祝い酒で、特に新成人たちが初めて口にするお酒としても贈られるそう。
東京諸島で作られる焼酎のほとんどは麦焼酎だが、七福嶋自慢は芋の甘みと麦の香ばしさが同時に楽しめるのがウリらしい。
■焼酎に合わないはずがない!島で人気のおつまみ
焼酎の紹介を終えた浩司先生が早々に見せてくださったのが、島で人気のおつまみ3種類。
たたき揚げ、明日葉・ツナマヨネーズ・島唐辛子のあえ物。
そして、くさや。
どれも新島を代表する食材が使われており、これはもう焼酎に合わないはずがありません。
写真左のたたき揚げは、くさやにも使われるアオムロアジをすり身にして揚げた郷土料理で、お鍋やお味噌汁にも入れるそう。
右はスティックタイプのくさや。
「手を汚さずに食べられるのでお土産にも人気」と商売上手な浩司先生。
浩司先生におすすめを聞いたら楽しくなって全部買ってしまいそう…
4. 新島の焼酎と名物くさやの試飲試食タイム
せっかくなので羽伏浦焼酎とくさやスティックで先生方と乾杯。
乾杯まではいいとして、ここからがくさやチャレンジ。
くさやスティックは密閉されているので、なんとなくにおいするかな?程度に感じていたものの、スティックだからと甘くみてはいけなかった。
少し開けただけで、ザ・くさやのにおいが部屋中に!
(私は後日食べましたがにおいが強烈だったのは最初だけで美味しかったです。くさや初心者はぜひスティックから!)
「(希さんの様子を見て)そのリアクションは新島の人が喜びます!」と嬉しそうな浩司先生。
(希さん)「くさやを焼いていると200m先でもわかるって本当ですか?」
(浩司先生)「わかりますね」
ちなみにくさやにはアミノ酸が含まれているので疲労回復にもいいとか。
まさかこのイベントでくさやを食べる機会があるなんて、ちょっと珍しい試食タイムでした。
5. 島を学べるクイズ
島のあちらこちらに点在するコーガ石のオブジェ「モヤイ像」。
Q:新島のモヤイ像は島内に何体ある?
(次のうちのどれでしょうか?答えは最終章に)
A:約50体 B:約150体 C:約400体
ちなみに、モヤイには素敵な意味があるのをご存知でしょうか。
モヤイとは昔の古い言葉で「一緒にやろう!」「助け合う」という意味があります。
もともとは船をつなぐ舫い(もやい)から来ている言葉で、新島の方言ではないそう。
「新島の方言だともっと砕けて『もええ』と言って、一緒にやろうよ!を『もええでやろうじゃ!』という使われ方をする。そこからとってモヤイ像という名前になった」と久美先生。
島での限られた人数で何かするにはみんなの協力が必要。
そんなときに『もええでやろうじゃ!』と声をかけ合うのが習慣だったとか。
6. 事前質問「島に移住するメリットとは?」への回答
隼人先生にお聞きしました。
「(島の人間として感じていることは)地域の人との距離が近くなるので互いに助け合えること。しかし一方で、人との関わりが濃くなるぶん、一人でゆっくり暮らしたい人には面倒で難しいなと感じてしまうこともあるかも」。
島の人との関わりについて詳しく知りたくなったら、是非NABLAへ。
隼人先生を訪ねて島のことをたくさん聞いてみてくださいね。
7. 島で生きることとは?
最後、ズバリ先生方に聞きました。
久美先生「ありのままを受け入れることだと思います。自然の中で暮らしていくので、人間ではどうにもならない台風、地震、船の欠航などということを誰のせいにもできません。ありのままに受け入れることが生活する術だと思っています」
隼人先生「人とのつながりということに頼りあって生きていくことなのかなと思います。困ったらお互い様みたいな感じで」
宏樹先生「島と人と自分を愛することだと思います。愛がすべてです」
浩司先生「Slow(ゆっくり、ゆったり)に挑戦できる、みたいな。時間が島はゆっくり流れる感覚があるので。
さっき言い忘れちゃったんですけど、自サイダーを作って焼酎と一緒に飲めるような場所を新たに作ろうと思っています。そういう新しいことを考える時間や協力してくれる人がたくさんいますし、Slowにマイペースに挑戦できることも島のいいところかなと思います。素材もいっぱいあるので」
希さん「確かにゆったりした時間の中で、ゆったりとした心でいると、いろんなことを考える余裕も出てきますよね。島ならではなのかなと思います」
先生方、とても素敵な回答をありがとうございました。
またの機会にもっと詳しく聞いてみたいです。
8. 本日学んだことのまとめ
先生方から学んだ「島の生きる力」は次の3点。
・島固有の資産であるコーガ石について
・”つなぐ場”の力。人との出会い、発想と挑戦
・人から人へつながっていく思い
最後に。
コーガ石、Hostel NABLA、つながり合う笑顔と物語、焼酎とくさや、島で生きること、新しい挑戦など、先生方が島で生きる原動力に共通するのは「人」だと感じました。
それは、新島にしかない魅力を伝えたい思いがあるからこそ。
人が好きで、新島を愛している。だから島の力になりたいという純粋な思いもたくさん感じた時間でした。
久美先生、隼人先生、宏樹先生、浩司先生、新島の魅力をたくさん教えてくださり、ありがとうございました。
くさやを食べている表紙で遊べます!
参加者の皆様もありがとうございました。
ご自身の生き方を振り返ってみたり、これからを考えるきっかけにもなったのではないでしょうか。
さて、新島クイズの正解は、「B:約150体」でした。
正解していましたか?
島内に点在するモヤイ像を探しながら旅をするのも楽しそうですね。
さあ、2時間20分かけて行くならどこへ行く?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
また次の島でお会いしましょう!
/Officeひるねこスタッフ
★先生方の詳しいプロフィールはこちらより
https://weekend-islandtrip-event2.peatix.com/view
★Hostel NABLAのHP【隼人先生】
http://hostel-nabla.com/
★NUMA FILMS【宏樹先生】
https://numafilms.tokyo/
★宏樹先生Instagram
https://www.instagram.com/numa.0ne_to_1/?hl=ja
★宮原酒造HP【浩司先生】
https://shimajiman.com/
★クイズの回答に関して
http://niijimag.com/article/3209/
★浩司先生が挑戦する自サイダーに関して
https://www.instagram.com/islandscider/?hl=ja