佐賀県唐津市の呼子港から客船に乗って15分、かつて隠れキリシタンがみつけた無人島だった松島。
豊かな海の恵みを享受できる玄界灘で、何代とつづく海士漁が島の暮らしを支えている。
人口56人のうち、9人が20代。離島のなかでも、若者が中心に、島の現在や未来を考えて、さまざまな取り組みをしている。
その一つが、リストランテマツシマというイタリアンレストラン。海士が獲ったウニやアワビ、おばあちゃんが作った野菜など、皆が家族のように助け合う。
島の恵みをふんだんに使った料理に、ゲストは舌鼓を打つ。
海士たちは、今日も深い海に潜って、島に、自然に、感謝の念を忘れない。
美味しい美食に出会い、自然に感謝する
松島は、代々男たちが海に潜り、ウニやアワビ、サザエや魚など、魚介類を穫って暮らしてきました。
流れも早く、水深も深い玄界灘だからこそ、豊かな海の恵みを享受できたのですが、海士たちにとっては命がけの漁でもあります。
彼らをはじめ、島の人たちは、つねに自然に寄り添うようにして、自然のルールに従いながら、一度も事故を起すことなくやってきました。
現在人口は56人で、そのうち20代の若者が9人。
「自然の生態系をなるべく壊さず、島の未来を考えていく」
そういうのは、島生まれ島育ちの宗勇人さん。若者のリーダーで、島でイタリアンレストラン「リストランテマツシマ」を開業したオーナーです。すでに中学生のときから、島を出ずに暮らしていくために、どうすべきかを考えていたそうです。
亡き祖父も海士で、現役の父、弟、いとこたちも海士。時間があるときは、一緒に海に潜りにいくそう。
「皆がバラバラに獲りに行ってはいけないのがルール。一艘で漁に出て、みんなで潜って、みんなで帰ってくるんです」
これは、身の安全の確保と、乱獲を防ぐためだと言います。乱獲すれば、海の生態系が崩れてしまうからです。
夜、若者たちが集まり、島で出来ることを語り合い、机上の空論ではなくて、一つずつ実現に移しています。
リストランテマツシマでいただくフルコースランチ(9800円)は、食材の旨さだけでなく、島の未来を思う島の人たちの心に出会い、自然への感謝の気持ちに浸る、豊かな時間なのです。
自然の循環を意識した、若者たちの作品
父や弟、いとこが穫ってきた魚介類、おばあちゃんが作った野菜やハーブなど、島生まれ島育ちの食材をふんだんに使った、美食フルコースランチです。
こんな大量の食材をすべて使っていただきます。
キッチンとダイニングが近く、シェフの宗勇人さんと会話をしながらいただくことができます。
食材や島の話を聞きながら、島の人へ想いを馳せ、自然への感謝の気持ちがこみ上げてきます。
食後、畑を見せてもらいました。
「これ、ブロッコリ—の花です。かわいいでしょう? これもね、食材に使えると思うんです」
ブロッコリーも、本来食材にはしない部位の花にも、価値があると言います。
海の仕事だけではなくて、オフシーズンなどは畑の仕事も皆でできるようにと、開墾した野菜畑があります。
「僕たちが島を出る必要がなくて、ここで皆が家族を持って、養っていける術を考えたい」
うぐいすが上手になき、野菜が風にそよいでいます。自然も、彼らを応援しているみたいです。
海士道具。
<行き方>
佐賀県唐津の呼子港から客船「新栄」に乗って15分ほど。
1日3往復便。(リストランテマツシマへは9:50に乗り、13:10か16:00で戻る)
帰りの船で、往復920円(片道460円)を船長に支払う。