瀬戸内海を横断する、船旅の概念が変わる船

【商船三井さんふらわあ】国内初のLNG燃料フェリー

船の歴史をアップデート! 豪華絢爛でやさしいクルーズフェリー

2023年に就航した「さんふらわあくれない」「さんふらわあむらさき」は、大阪―別府航路を運航する商船三井さんふわらあの新造船。同航路の歴史は古く、1912年に商船三井の前身である大阪商船によって開設され、初代「紅丸」が就航した。1960年に就航した3代目「くれない丸」は、豪華な内装から“瀬戸内海の女王”と呼ばれていた。
エネルギーが石炭から石油に変わっていく「エネルギー革命」の時代(1950年代~1960年代)よりもいち早く、当時最先端の技術とディーゼルエンジンを搭載したのは、1924年に就航した2代目「紅丸」だった。
新造船「さんふわらあくれない・むらさき」も、国内で初めてLNG(液化天然ガス)を燃料とする貨客船として建造された。豪華絢爛な船内は、船旅する者を虜にするオーラを纏っている。船旅におけるエネルギー転換期の象徴といえる「さんふらわあくれない・むらさき」。船内のバリアフリー化およびデジタル化でも時代の先駆けとなっている。

  1. 商船三井さんふらわあ(大阪〜別府航路)
  2. 船社の概要/アクセス

新造船「さんふらわあくれない・むらさき」に乗船!

歴史の古い商船三井さんふらわあの大阪〜別府航路。
同社は、他にも、神戸〜大分の航路は、フェリー「ごーるど」「ぱーる」が就航し、大阪〜志布志の航路は、フェリー「さんふらわあきりしま」「さんふらわあさつま」が就航しています。
その中で、2023年に就航した新造船「さんふらわあくれない」「さんふらわあむらさき」は、同社が保有する外航クルーズ船「にっぽん丸」の改装を担当したフラックスデザインの渡辺友之氏が手がけ、別府の竹細工などの伝統工芸をモチーフにした和テイストかつ豪華絢爛な装いをしています。

「エネルギー革命」の時代(1950年代~1960年代)よりもいち早く、1924年に、当時最先端の技術とディーゼルエンジンを2代目「紅丸」に搭載しました。
新造船「さんふわらあくれない」も、国内で初めて、環境にやさしいLNG(液化天然ガス)を燃料とする貨客船として建造されました。硫黄酸化物をほぼ排出せず、窒素酸化物と二酸化炭素の排出を大幅に削減するなど、環境負荷の軽減に貢献しています。最先端技術の導入やこだわりの設計などにより、静粛性と快適性も向上しています。

商船三井グループは、2020年に「環境ビジョン2.0」(23年に「2.2」まで更新)を発表し、2050年までのネットゼロ・エミッション(産業活動による温室効果ガスの排出や廃棄物などをできる限りゼロにする取り組み)の達成を目標に掲げています。

船内のバリアフリー化およびデジタル化においても、新造船建造前に障がい当事者などにアンケートを集め、「段差が困る」「エレベーターが1基だと不便」「QRコードの乗船をしたい」などの意見を反映させたそうです。
まず、「スマート乗船チェックイン」がスタート。
WEBで乗船予約をすると、発行されたQRコードで乗船や入室ができるようになり、乗船手続きのためにターミナルの窓口に来る必要がなくなりました。支援などが必要な人には、WEB予約の段階で事前に情報を提供してもらっているため、的確な支援も可能に。

また、レストランや売店でのキャッシュレス決済はもちろん、船内にはデジタルサイネージが多数設置されており、船内情報や発着する地域のガイド、天気、到着時間などを案内しています。
大浴場では、入口に設置されたセンサーで入室人数を把握し、デジタルサイネージで混雑状況を伝えています。24時間使えるシャワールームや女性用パウダールーム(トイレ内)もあるので、人の視線が気になる人や船内でもきちんとセルフケアしたい人なども快適に乗船できます。

バイアフリー対応の客室は、「スイートバリアフリー」や「プライベートベッドグループ」、「グループ和室」など何種類かあり、部屋のドア横には車椅子マークと点字の表示が付いています。
入室の際は、QRコードをドアに設置してあるリーダーにかざすと、ドアが自動で開閉します。いずれの部屋にも緊急用の呼び出しボタンが付いており、何かあれば24時間船員に繋がります。パブリックスペースは段差をなくし、車椅子でもゆったりと移動できる広さが確保され、エレベーターは2基設置されました。

「さんふらわあくれない」のコンセプトは二つ。
一つは、定期航路で気軽に上質な船旅としてのクルーズが楽しめる「カジュアルクルーズ」。二つ目は「KIZUNA」。世代や国境を超えて、家族や仲間が集って船旅を楽しんでほしいという願いが込められているそうです。

設備や空間などのハード面とデジタル化されたサービスなどのソフト面による進化を見れば、「だれもが快適に過ごせますように」というあたたかい思いが感じられます。乗船を機に船の印象が変わり、“船旅”そのものに興味を持つ人たちも増えるでしょう。

(エコモ財団広報誌「ECOMO」/小林希執筆 より記事を抜粋)
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